バブルのとき円安だった理由

世界経済は、本年後半から本格的な減速局面に入り、グローバル・リセッション(世界規模の景気後退)の懸念が高まろう。一方、わが国経済は、震災からの復興特需に沸き、急激な拡大局面を迎えることになる。この組み合わせは、逆説的に、わが国がバブル経済期に経験したような大幅な円安局面を、外国為替市場にもたらす公算が高い。ドル円相場は2012年に向けて100円超を目指す展開が予想される

バブル経済下で進展した円安の再来か

冒頭に述べたように、わが国のバブル経済期において、ドル円相場は急激かつ大幅に上昇したが、そのメカニズムは以下のようなものであった。

 

第一に、日本経済が内需主導の力強い成長を続けた一方、米国をはじめとする世界経済は成長が鈍化しつつあった(米国は1990年7月からリセッション入り)。加えて、1985年9月のプラザ合意によって、当初240円であったドル円相場は、1988年には120円まで2倍の円高となっていた。この円高と内外景気の成長格差によって、わが国の経常収支は、1987年初めの1.2兆円/月から、1991年初めには0.5兆円/月まで、半分以下となった。

 

第二に、上述の円高によって海外資産に割安感が強まったうえ、好景気により投資家のリスク許容度が上昇するなか、日本銀行が、公定歩合を1987年2月から1989年4月まで史上最低(当時)の2.5%に据え置いたため、直接投資と証券投資を通じたすさまじい資本の海外流出が生じた。 1986年初めに1200億円/月程度であった直接投資の流出額は、1990年半ばには6500億円/月程度まで、5倍以上に膨れ上がり、この結果、1990年終わりから1991年初めにかけて、経常収支と直接投資を合算した基礎収支は、1985年以降現在に至るまで唯一黒字化している。

 

第三にインフレ率が上昇した。 1987年1月には前年比1.1%の下落まで落ち込んでいた消費者物価上昇率(総合)は、主に景気拡大によって、1990年3月に同3.5%まで上昇した。

 

バブル経済期には、このような経常収支黒字の縮小、資本流出の拡大、物価の上昇によって、円か大幅に下落したと考えられる。