消去法で日本株買い

世界経済は、本年後半から本格的な減速局面に入り、グローバル・リセッション(世界規模の景気後退)の懸念が高まろう。一方、わが国経済は、震災からの復興特需に沸き、急激な拡大局面を迎えることになる。この組み合わせは、逆説的に、わが国がバブル経済期に経験したような大幅な円安局面を、外国為替市場にもたらす公算が高い。ドル円相場は2012年に向けて100円超を目指す展開が予想される

投資先なく、消去法で日本株買いを視野に

海外投資家が日本株に注目しているのは、他に投資すべき魅力的な株式がないことも理由の一つだ。「米国景気は失速懸念、欧州は財務問題、中国をはじめとした新興国にはすでに投資しており、さらに投資する段階にはない。すると消去法でこれ以上の下落リスクはないであろう日本株が投資家の引ことまっているという事情もある」と長手氏は分析する。

 

「とくに欧米の投資家は、ここ数年、日本株にアンダーウェイト、もしくはポジションなしというところもある。だからこそ今、投資するなら日本株が買いやすい状況にあるのではないか」欧州の投資家と米国の投資家ではやや見方が違う部分があるという。「欧州は足元で各国の財政危機問題が深刻になっており、経済の先行きが不安視されている状況だ。先進国のなかでもベターなものとして日本株をポートフォリオに取り入れようとしている。地域分散の考え方から日本に注目しているといえる」

 

一方、米国の投資家は国として注目しているわけではないと感じている。「グローバルでどこの株に投資するか検討するなかで、セクター別で見て、例えばトヨタがいいのか、GMがいいのか、ヒュンダイがいいのか、といった見方をしている。今の状況で、割安感があり、かつ高い技術力を誇る日本の個別銘柄に関心を寄せているようだ」と分析する。

 

「とくに日本企業は地理的メリットからアジアの成長を取り込める絶好のポジションにあり、国際競争力の観点からも日本企業に注目する海外投資家が多い」こうした見方は今後も多くの投資家に広がりそうだ。長手氏は「10年前なら国ごとに株の値動きが違ったので、地域分散投資をする意義があったが、今はそういう時代ではなくなった。セクター別にどこのグローバル企業を買うべきか、個別銘柄の選別が今まで以上に重視されている」と話す。

 

見方は違うにせよ、欧米の投資家が日本株バッシングから一転、関心を寄せるようになった一因には、割安感だけでなく震災後の日本人のメンタリティもある。「欧米人から見れば、災害が起き、自らが大変な時にセルフィッシュな行動をせず、みんなで助け合う光景は尊敬の念を抱かせるものだった。このような危機的な状況にもかかわらず、食事をもらうのにもきちんと整列していることも日本人への高い評価へとつながった。復興支援のために一丸となっている日本人の行動が日本株見直しの一端になっているのは間違いない」

 

ただ残念なことに、欧米の投資家が日本への投資で一番のリスクと考えているのは、政治の無策だという。「現政権がいい悪いといったレベルではなく、内閣が変わろうが首相が変わろうが、今の日本の政治には経済を活性化させるりーダ十シップがないと見る投資家が多かった。日本企業の技術力や国際競争力が高く評価され、割安さという観点でも注目されているにもかかわらず、政治が足を引っ張っているため、投資にブレーキがかかっているのは非常に残念なことだ」